私は大学4年生。 当時は、目の前の就職活動に追われて、 自分の将来のことすらよく分からなくて、ただただ焦っていた時期だった。
彼――佐藤さん(仮名)に出会ったのは、OB訪問のときだ。 35歳、大手企業の管理職。 スーツを完璧に着こなし、穏やかな笑みを浮かべて私の拙い質問に答えてくれる彼は、 不安で押しつぶされそうな私にとって、まるで暗闇を照らす灯台みたいに見えた。
「大丈夫。君なら、きっといい道が見つかるよ」
そう言ってコーヒーを差し出してくれる彼の余裕が、 当時の私には、たまらなく眩しくて、頼もしかったんだ。
相談に乗ってもらう回数は、自然と増えていった。 就活の進め方、社会人の心得、キャリアのこと……。 いつの間にか、食事をする頻度も高くなっていて、 気づけば私は、彼との時間を、ただの「アドバイス」以上のものとして待ち侘びるようになっていた。
内定が決まった、あの日の夜のこと。
「お疲れ様。頑張ったね。今日は特別なお祝いをしようか」
街の灯りがきらめくレストランで、彼はそう言って微笑んだ。 内定の喜びで胸がいっぱいだった私は、 彼が用意してくれた特別なディナーに、ただただ浮かれていた。
けれど、店を出て、夜風に吹かれたとき。 彼の纏う空気が、それまでの「優しい先輩」から、 もっと別の、抗いがたい何かへと変わったことに気づいたんだ。
タクシーに乗せられ、連れて行かれたのは、 街の喧騒から少し離れた、落ち着いた外観のホテルだった。
「……ここ、ですか?」
少しだけ不安が混じった私の問いに、彼は答えなかった。 ただ、私の腰に手を添えて、優しく、けれど有無を言わせない強さで、 私をエスコートしたんだ。
ホテルの部屋に入り、重厚なドアが閉まった瞬間。 そこに漂っていたのは、圧倒的な「社会人の余裕」だった。
学生の私が、どれだけ必死に、どれだけ不安に震えていても、 彼はそれをすべて見透かしているような、そんな落ち着きがあった。
彼の手が私の頬を撫でるとき、 私は自分が、とてもちっぽけな存在に感じられた。 知識も、経験も、精神的な余裕も、すべてにおいて彼の方がずっと上。 その力関係の差が、心地よい緊張感となって、私の肌を刺すんだ。
「……怖がらなくていいよ」
耳元で囁かれる低くて甘い声。 彼にリードされるまま、服を脱がされていく過程さえも、 まるで決められたプログラムのようにスムーズに進んでいく。
抵抗したいわけじゃないけれど、 自分から何かを仕掛けるなんて、到底できない。 ただ、彼の掌の中で転がされている感覚。 それが、たまらなく官能的で、少しだけ恥ずかしかった。
行為の最中も、私はずっと、彼に「支配」されているような感覚の中にいた。 彼が望むままに身体を動かし、彼が与えてくれる快感にただ身を委ねる。 学生である私には到底持ち合わせていない、 成熟した大人の男の、剥き出しの欲望と技術。
その圧倒的な差に、私は翻弄されながらも、 自分でも驚くほど深く、身体の芯まで沈み込んでいったんだ。
終わったあと、静まり返った部屋で、 シーツの擦れる音だけが響く中で、彼は私の髪を優しく撫でてくれた。 その手つきは、また、いつもの「優しい先輩」に戻っていたけれど。
翌日、私は彼からのお礼のメッセージを受け取り、 また、何事もなかったかのように、就職活動の準備へと戻っていった。
でも、知っているんだ。 あの夜、私たちが共有したものは、単なる「お祝い」なんかじゃない。 社会という荒波に放り出される直前の、 不安定で、けれど鮮烈だった、不均衡な熱だったのだと。
今でもふとした時に思う。 あの時、彼に見せた私の無防備な姿は、 果たして、どれほど彼を愉しませていたんだろうって。
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